オフィス・庁舎

新潟県新発田市役所 ヨリネスしばた照明計画事業

歴史ある街の、新たなランドマークとして。
人が集まる、光の計画。

コシヒカリの産地としても知られる新潟県・新発田市は、新発田城に代表されるように歴史的建造物を数多く残す街。そのため市民の景観維持への関心も高く、街の新しいランドマークとして完成したのが新発田市庁舎である。「人が集まる」をコンセプトに、行政サービスの提供場所としてだけでなく、開かれた庁舎として様々な場面での活用が期待されている。そのコンセプトをもとに山田照明では「見守る・つなぐ・寄り添う」という照明計画を行った。

事業主 :新発田市建築
設計 :aat+ヨコ
構造・整備設計 :ミゾマコト建築設計事務所
建築工事 :Arup
電気設備工事 :大成・新発田・伊藤JV
照明デザイン :大進・ミトモ・飯豊JV
:山田照明株式会社
新発田市役所ヨリネスしばたのCG写真新発田市役所ヨリネスしばたの写真

閉庁時にも活用される、オープンな場所に。

お祭りなど様々なイベントに活用される「札の辻広場」。「閉庁時にも市民に場所を活用して欲しい」という要望を受け、オープンなスペースは外が暗くなるとガラスを鏡がわりに使えるように照明計画を行っている。ガラス前に立つと自分の姿がはっきりと映り込み、若者たちのダンスなどの練習場所として活用できる。地元に「寄り添う」光の計画で人が集まる場所となっている。

和釘頂部のスペースを最大限に活用してLEDを配置したの写真
新発田市役所ヨリネスしばたのCG写真新発田市役所ヨリネスしばたの写真

異なる色温度で、エリア分け。斬新なデザインが目を引く。

1階は市職員が働く執務エリアと、市民が利用するコミュニティエリアという2つの機能を併せもつ。この2つのエリアには、執務エリアに白色、コミュニティエリアに電球色という色温度の違う照明を採用。また目を引くのが、30メートル続く特注のライン照明。コンクリート躯体に直接照明が設置されているのも特徴的だ。物理的な仕切りを設けず色温度でエリア分けをしたこと、外部と内部の視線をつなげるライン照明を採用したことで、広がりのある空間を演出することができた。

1F lighting Plan

1F lighting Plan

  1. ❶ Line Lighting (Ambient)

    外部からロビー、ロビーから執務空間のつながりを意識したライン照明。上下配光のペンダント照明によって特徴的な天井意匠もアンビエントライティングしながら、下向きのあかりで手元照度も確保。ヒューマンスケールなあかりとなる。

  2. ❷ Wall Washer Lighting

    壁面のサインやコミュニケーションウォールを照らしつつ、通路の明るさも確保。

  3. ❸ Mirror Lighting

    回路分けされたスポットライトでガラス前だけが夜間点灯。ガラス面がミラーとして浮かびあがり、ダンスの若者たちに開放できる仕掛けとなる。

  4. ❹ Spot Lighting

    屋内と屋外をつなぎ、人びとを誘導するリズミカルなあかり。

  5. ❺Focus Lighting

    普段は壁を演出する光。イベント時はステージ照明として利用できるあかり。

4F 交流サロン

4F 交流サロン

2F 階段・廊下

2F 階段・廊下

1F 札の辻ラウンジ

1F 札の辻ラウンジ

INTERVIEW

メーカーだからこその提案で、限界値を塗り替える。

栗原 保志
開発設計部 プロジェクトリーダー栗原 保志
昆野 知彦
CG担当昆野 知彦
中村 大輔
コンセプト・プランニング担当中村 大輔
栗原
今回は設計事務所と、着工前の基本設計段階から直接組んで進めた面白いプロジェクトだったんです。
中村
設計事務所が考えた建物全体のコンセプトをもとに、まずはこの街や建物に似合う照明計画のコンセプトをたてました。メーカーだからといって器具のことだけを考えているわけではありません。大切なのは光についてのコンセプトであり、最初の打合せでは器具の話はほとんどしなかったと思います。
栗原
この案件を通して、メーカーが入るからこそのメリットを知ってもらいたいですね。
中村
例えば1階の30メートル続くペンダント照明は、天井の意匠性を壊さぬように、コンクリート躯体から直接吊す必要がありました。メーカーの私たちが直接意見できることで、実現可能かどうか、こうやればもっとうまくいくというような改善策など、時間的ロスを少なく、とにかく具体的に話が進みました。
昆野
この長いペンダント照明。何気なく見えますけど、ものすごく大変なことなんですよね。他メーカーなら断られるかもしれません。
中村
コンクリート打設のときに照明位置まで決めてしまっている。通常ならあまり考えられないことで、これは私たちメーカーと直接やり取りするからこそ実現した特徴的なデザインです。
栗原
市庁舎そのものをオープンにするというテーマもあって、1階のコミュニティエリアでは地元の学生が読書したり図書館みたいに使っていたりもするんですよね。
昆野
市職員が働いている執務スペースは白色の光の方が仕事モードになっていいと思うんですが、コミュニティエリアはホテルのロビーのように安らぎのある雰囲気があってもいいよねということになって電球を採用しています。同じエリアで異なる色温度を意図的に計画することは特徴のひとつとなるので、違和感がないかCGで何度も検証しました。他に同じような事例がないかも、かなり調べました
栗原
メーカーとして、照明デザイナーさんや設計事務所さんに提供できるメリットは他に何かあるかな。
中村
「ないものは作ってみる」という選択肢をどこまで気軽に提供できるかは重要だと思います。今回、最終的には標準品を使用しましたが、当初2階から上層の天井には輻射パネルを使うという話もあって、そこにどのように照明をいれるのか特注図面を描くチームが検証していました。山田照明って他メーカーよりも限界値が高いですよね。普通なら難しいから断ったり、違う方法を模索したりするようなところを、「なんかできそうじゃない?」と図面を描き始めたりしてしまうところがありますね。
昆野
今回は建築の基本設計段階で実現可能かどうか判断し、最終的にもフォローをしっかり行うというメーカーならではのメリットが発揮された案件でした。
中村
私たちの限界値もまた、一段と上がったような気がします。